カンゲキ記

夢のひとときに感謝

『歌と朗読で綴る 大切な人〜わたしの家族が見た戦争〜』

4月26日、京都三条通り商店街の路地にある「green&garden」という
小ぢんまりとした可愛らしいアトリエにて
『歌と朗読で綴る 大切な人〜わたしの家族が見た戦争〜』
を拝見しました。

無名塾を主宰されていた宮崎恭子さんの著書「大切な人」の世界を、
今回主催の仲代奈緒さんはじめ、役者さんたちの声と、アーティストさんの
歌・音楽で紡いでいくスタイルの朗読劇。

恭子さんの溌剌とした少女時代、その少女が目の当たりにした戦争。
そして、広島に投下された原子爆弾
とてもしなやかな感性を持った一人の少女が体験した出来事、ふれあった人々の
姿が鮮明に浮かび上がる時間でした。

恭子さんの物語は、喜びも悲しみもその中心に家族があります。

原作を拝読した際に印象的だったのは、お父様の姿です。
文面から、恭子さんはお父様の事を心底尊敬し、愛し、そして
その存在に追いつきたいと思っていらっしゃったのではないかなぁ…と感じました。
今回、そのお父様の言葉を合田さんが朗読されました。
穏やかさの中にしっかりと根付く芯の強さ、理路整然とした冷静さ、
静かな優しさ、時折チラリと顔を出す不器用さ(笑)
…そんなお父様の姿に、合田さんの深く優しい声がぴたりと寄り添います。
私の大好きな<ポースー>の場面も盛り込まれており、ニヤニヤしてしまいました(^^;

朗読って「読む」わけですから、読み手は完全にその人物ではないのですよね。
その人物、筆者、そして読み手となる自分自身。少なくともこの三者の思いを
考慮せねばならないものだと私は思っています。
合田さんは、恭子さんのお父様をはじめ、疎開先の呉で一緒に過ごしていた
優しく頼もしい友彦おじさん、そして、原爆に奥さんと幼い我が子を奪われた
治雄おじさん、3人の姿を表現されました。
といっても、著しく声色を変えるわけではなく、威厳を感じさせる低めのトーン、
屈託のない温かい声、やり場のない悲しみの慟哭。全ては心の動き。
飾りのない真っ直ぐな声と言葉は、私たちの耳に届いた時、様々な姿に変化します。
合田さんのよく通る艶やかな声に、3人それぞれ機微が写し出されていました。
ご自身の持っていらっしゃる優しい雰囲気やスマートな知性、精悍さなども
ロイヤルストレートフラッシュ(笑)で垣間見えます。

やっぱり、合田さんの纏う空気や表現が大好きだー!と改めて思いました。

奈緒さんの歌声も、ロミシラ以来に拝聴しましたが、相変わらず小さな体からは
想像できないほど伸びやか。時に力強く、時に切なく。
心洗われる思いがしました。


とても素敵で大切なひとときでした。