カンゲキ記

夢のひとときに感謝

東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ『テイクオーバーゾーン』

今年の東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門に正式出品された
『テイクオーバーゾーン』
第2回ジュブナイル脚本大賞を受賞した作品を、若手の山嵜晋平監督の指揮で製作された青春映画です。
ジュブナイル作品とは、ティーンエイジャー向けの小説やドラマ等を指します)

こちらの映画を11月1日、4日と2日間に渡って鑑賞して参りました。

CSで『女王の教室』や『14歳の母』の一挙放送をやっていて、
「そういえば、こういうジュブナイル系の作品って見なくなったよね~」と思っていた矢先、
なんというタイミングでございましょう。これはぜひとも見なければ!
(……いや、出演者に合田さんのお名前があったからという邪な理由が第一なのですが・汗)

人々が敏感になりすぎたり、SNSという便利でありながらある意味超不便なツールが
隆盛を極めている昨今、もしかしたら一番作りづらいテーマなのかもしれません。

そんな現状に真っ向から立ち向かったとも思われる超王道の青春映画。

もうね、ヒリヒリする。ヒリヒリ。古傷も痛むし、さっき怪我したところも痛む(^^;
自分も大人の嫌らしさを嫌悪だけで拒絶できる年齢ではなくなってしまっただけに
複雑な環境に身を置く子供たちの遣り切れない思いや純粋な心に、後ろめたさやら
申し訳なさを感じ、身を裂かれるような気分になってしまいました。

印象深いのが主人公と祖母の会話。
おばあちゃんの台詞、切ないね。
おばあちゃんにとって孫が可愛いのは当然だけど、娘にだって幸せになって欲しいだろうし、
主人公・沙里の父親から沙里を奪ってしまう事……彼をひとりぼっちにはできないという、
娘(沙里の母)のしたこと(?)に対する贖罪の念もあるかもしれない。
ああ言わざるを得ないおばあちゃんの胸中をなんとなく察して「そう言うしかないよね」と
納得できる自分は、子供からみたら意地悪な大人になってしまったのかな(^^;

私の心情はさておき、若い役者さんたちの姿が何よりも尊い作品です。
粗削りな芝居も、取り繕う事のないまっすぐな視線も、演じている彼女たちの今が
スクリーン狭しと迸っていて、決して明るく華やかな物語ではありませんがキラキラ輝いています。

10代の瑞々しさやあの頃特有の気持ちの波、目の前の靄を消さんが如く必死にもがく姿が
鮮烈な作品です。
少年少女がこれまた必死にもがきながら等身大の登場人物を演じる姿に「がんばれー!」と
拳に力が入ってしまいます。

合田さんが演じるのは、主人公・沙里のクラスメイト兼部活仲間である雪菜の父親。
誰が見ても正しく優しい大人ですら、子供にとっては自分を傷つける鋭いメスになりかねない。
彼がとある場面で放つ台詞は、沙里から言わせてもらえば盛大なブーメランかも(^^;

大人の事情に振り回され、どこか大人以上に大人でいなければならない子供たちの言葉や表情が
胸に刺さります。

雪菜の家族が信じる幸せを背中に独り走り出した沙里の、今にも張り裂けんばかりの小さな心が
気が気ではなかったのですが、頼りなくも確かな手がその心をしっかり掴んでくれたようで
安堵のエンディングでした。

一般公開は来年以降になるようです(撮影地の奈良から公開されていくのかな?)
素朴ですが、少女の心を丁寧にあぶり出した作品。お近くで上映の際はぜひ。

※11月5日に開催された、東京国際映画祭クロージングセレモニーに於いて、
主演の吉名莉瑠さんが東京ジェムストーン賞を受賞されました!!
おめでとうごさいます!!
この映画を観て、一人の少女の運命が大きく動き出す瞬間に立ち会えたようでドキドキします。
これからのご活躍、楽しみです!