カンゲキ記

夢のひとときに感謝

春秋会男組公演vol.3〜第一部『応挙絵噺再幽霊』〜

三越劇場にて、『春秋会男組公演vol.3』を観劇。

初回から気になっていた舞台なのですが、毎回公演期間が
短いのでなかなかタイミングが合いませんでした。
が!今回は念願の合田雅吏さんもご出演とのことで、コクーン歌舞伎
何もかも差し置いて、這ってでも行く覚悟でございます(笑)

昨年に引き続き、三越劇場でごーだサンの舞台を再び拝見できるなんて、
この上ない喜びです。大好きな小屋で、大好きな役者さんの芝居が見られる…
入梅し早速の大雨ですが、心は晴れ晴れ。

さて、肝心の舞台は、お芝居と舞踊の二部構成。

まずは、落語の『応挙の幽霊』に材を取った

『応挙絵噺再幽霊』

これを何の疑いもなく、
「おうきょのえばなしごにちのゆうれい」
と読めてしまうんですから、歌舞伎好きってやっぱりヘンだと思います。
我ながら(^_^;)

日本橋の呉服問屋「鶴亀屋」の次男坊・卯之助がこの物語の主人公。
彼は故あって、深川の裏長屋に独りひっそりとその日暮らしの身。
骨董、書画に目利きの卯之助は、ある日、応挙の作という女の幽霊画を
購入。二朱に値切って買ったその絵は、もちろん贋作だろうと言うことで、
再び誰かに高値で売ろうと算段する卯之助。
大坂から出てきた成金の甘納豆屋をまんまと騙し、首尾よく百両手に入れます。
大成功の万々歳。仲間たちと祝杯をあげる卯之助。
幽霊画にもお礼の盃。
どんちゃん騒ぎしていると、どこからともなく不気味な女の声………
お酒につられた幽霊が、絵から抜け出し姿を現したからさぁ大変…!!

そこから始まる、幽霊と人間との悲喜こもごも、
ジェットコースターロマンス(笑)が、絶妙のテンポで描かれています。

1時間40分超のお芝居ですが、本当にあっという間でした。
定式幕がサーっと引かれ、柝の音がチョン。
下座音楽が鳴り、花道からは、揚幕がシャリーン!と開く音。
耳慣れた音たちが、気持ちを存分に高めてくれます。

幇間役の佐藤正宏さんや、まんまと騙され絵を買わされる
残念な甘納豆屋(笑)の曾我廼家寛太郎さんら、
喜劇界のベテラン陣は言うに及ばず、皆さん、江戸の
市井の日常を威勢よく楽しく生きて、物語を盛り上げます。

何といっても素晴らしかったのが、幽霊役の宗山流胡蝶さん。
調子の愛らしさ、舞踊家ならではの身のこなし。
身体の動きが凄くって、その仕草だけで存分に笑わせていただきました。
最高の女方さんです。
ちょっと嫉妬深くて、でも可愛くて優しくて、とってもとっても
イイ女の幽霊さん。
彼女が最後、幽霊としても母としても幸せになれたのがよかったぁ。
ほっこり温かい気持ちになれました。

それから、真島公平サン。水戸黄門の舞台の際、声も姿もよくて
巧い役者さんだなぁと思った方です。やはり時代劇が良く似合い、
スッキリとした男ぶりが素敵でした。
卯之助との悪友っぷりに萌えた…(笑)

『恋の冷凍保存』のルイおじいちゃんで大好きになった
川島一平さん。今回は矍鑠として大変物わかりのよい番頭さん。
おとぼけルイおじいちゃんとは異なるキャラクターだったの
ですが、、ラストはルイおじいちゃんを彷彿とさせる大どんでん!!
川島さん、相変わらずオイシすぎますヨ!(^^;


そしてそして、主人公・卯之助は合田さん。
大らかで奔放な次男坊ながら、大店の若旦那らしい
柔らかさや上品さ。そこはかとなく漂う色気は、幽霊のお千さん
や、許嫁のおみよちゃんじゃなくともクラクラとしてしまう色男。
町人髷に<しけ>を出した髪型が妙に色ぽっくて…
上方のつっころばしもそうですが、こういうお役って、
役者さん自身の品性だとか、纏っているしなやかな匂いがすごく大事で…
合田さんの持っていらっしゃるそれらが、卯之助の魅力と重なって、
素敵としか言いようがないくらい素敵でした。
卯之助は一見、好き放題のドラ息子なのですが、兄を思い、人を思い、
終いには、幽霊さんまで思いやっちゃう(笑)心根が清く優しい青年。
大切な人の為ならば、ドスを持った相手に唐傘で応戦してしまうほど、
勇敢で頼もしい一面も。
いやぁ、この立ち回りがカッコイイのなんのって!
歌舞伎でもよくある、唐傘バサって開いてのアレですよ!
最後の傘を担いでの見得なんて、目で殺られますですよ!ハイ。

もちろん、喜劇ですからそれだけではありません。
見目麗しさだけではなく、十分に笑わせてもいただきました。
スペシャルディナー』や『恋の冷凍保存』など、
コメディな合田さんを拝見する機会が増えた昨今。
映像作品では、精悍なお役やクールなイメージが強いですが、
私は合田さんのコメディでの<間>が大好き。
(いや、コメディじゃなくても、合田さんの間って
いいんですよぉ。その<間>にキャラクターの様々な思いを
感じることができます)
フッと抜く瞬間や緩急のタイミングが、心地よくて可笑しくて。
今回も、その<間>を存分に堪能致しました。あぁ、幸せ。

胡蝶さんとの掛け合いは可笑しみの中に、お二人の艶っぽさが
相俟って、独特の妖艶な空気を醸し出していました。
面白いし、甘美だし、もーどうすりゃいいのさ!(笑)

卯之助に握られた手を大事そうにギュッと結んで
嬉し恥ずかし、おみよちゃん@カムイくんの仕草が
乙女そのものでこれまた可愛すぎ!
許嫁のおみよちゃんに向けるフニャ〜っとだらしない笑顔も
愛らしい卯之助さんなのでありました。

お話も演出も出演者も全てが贅沢すぎて、至高至福のひととき。
この感動を文章に上手く表すことができないのが悔しい限りでございます。