カンゲキ記

夢のひとときに感謝

ミュージカルさよならソルシエ・再演

3月に入ってからもまだまだ寒い日が続いていた東京ですが、
お日様もひまわり畑に誘われたのか、ポカポカと春らしい陽気になりました。

初演からちょうど一年。

この日はモンマルトル席ならぬ、モンマルトルの丘の上席(爆)
要するに2階席です。勝手に命名

1010で再演と決定して、絶対に一度は2階から見たいと思っていたのです。
単純に1010の2階席からの眺めが好きなのと、この作品が奥行きのある
セッティングなので、俯瞰することで板上に散りばめられた感情を一度に
ギュッと得ることができるんじゃないかなぁ~と思ったのと…


執筆するサントロ氏の細かな動きがよく見えるんじゃないかと(←)

 

運よく、最初の観劇で2階席をゲットすることができ、↑の予想は全て的中!
もちろん、2階から見るのが楽しいというのは、複数回見ることができる故の
贅沢なのかもしれないけど、やっぱりこの作品は、舞台と自分の間にある距離で
感動の度合が変わることはないなと思いました。
舞台が自分にググッと寄ってきてくれる錯覚を起こします。

初演と違うところ、同じところ。
初演のほうが好きだなぁ~と思ったところ、初演の何倍も良くなったところ。
色々とありましたが、初演のDVDをこれまで数えきれない程見ているハズなのに、
目の前に広がるナマの景色は新鮮さと驚きに溢れていました。


劇場が変わったことで、音楽にも声にも余韻やまろみを感じることができ、
音に包まれている感覚がとても心地よかったです。
去年の音はちょっぴり寒かったから…
平野くんの歌声がね!去年初めて聞いて、天使のようだと感激したんですけどね!
今回さらにパワーアップしておりましてね!天使のふんわり感はそのままに、
力強さとしなやかさが加わって。パンフレットでうどんの事を語っていらっしゃる
んですが、まさにうどんのようなコシとツヤを備えておりました。
1010の音響でパワーアップした歌声を聞くことができて幸せでした。


キャストが変わった若手画家くんたちも、初演の造形にリスペクトを持たせながらも
また違った味わいがあり、とても楽しかったです。
初演では、燻りとか鬱屈した思いが前面に出ていて、彼らがゴッホ兄弟という
北風と太陽に触れて徐々に逞しくなっていく印象でしたが、今回の画家組は、
新しい芸術を俺たちの世界を世に出したい!という迸るパッションが兄弟との
セッションで見事に華開いていくといった感じ。
どちらも若さの衝動としてステキ。どっちも好き。

そして、画家組とサントロ氏の絡みが初演より楽しくなっていたのも嬉しい要素。
アイコンタクトも多くなって。
執拗なまでにサントロにじゃれついて叱られてシュンとしちゃうシニャちゃんとか、
執筆中のサントロの横でインク瓶を触ってみたり、何か話しかけようとしたり
ちょっかい出したくてたまらんって様子のエミールとか…

テオとサントロの関係性もちょっと変わったように感じました。
それぞれが持ち寄って物語を紡いでいく相棒感から、テオの非凡な思いを
サントロフィルターを通して可視化していくイタコ関係(?)に(何を言ってるんだ)
サントロがより兄弟に、テオドルスというソルシエに魅了されて堕ちていく
感覚が強くなった。
それによって、「ひまわり」にてサントロが歌うフレーズがより深みを持った気がします。

「戯曲 例えば ちりゆく 言の葉
 画家 例えば 命が 絵の具さ」

結局、自分の書いた物語は虚構でしかなくて、真実はフィンセントの
描いた絵のみが語っている。絵を見ればフィンの人となり、実像が浮かび上がってくる
ってことなのかな。うーん、難しい。

あと、初演ではフィンとサントロがぶつかる際、そのフィンの姿にただならぬ空気を
感じ「もしや?」といった雰囲気で覗き込むサントロでしたが、今回私が見た回では
傍にいるゴーギャンが「あれがフィンだよ」といった表情でサントロに目配せを
していました。

その変化の意味はなんだろう…

 

さて、明日は千穐楽

その歴史的瞬間の目撃者と成るべく。

いざ、モンマルトルへ。