映画『二宮金次郎』
新年あけましておめでとうございます。
・・・観劇記ちゃんと書くといったのに昨年観劇したもので
まだ書き終わってない作品がいくつかある。。
今年こそはしっかり記憶と記録に留めます。
さて、新年早々NHKの劇場中継で初春歌舞伎を大満喫した
気分になり(七之助さんの八百屋お七すばらしかった!)
幸先いいなぁ~なんてすっかりホクホクした気持ちでおりましたが、
今年の劇場初めはお芝居ではなく、珍しく映画鑑賞と相成りましてございます。
先日、小田原市民学校の公開講座を聴講させていただいた
五十嵐匠監督指揮の元、合田雅吏さん主演、脚本は柏田道夫先生という
全私が泣いた布陣(笑)で制作された映画です。
今夏の全国公開を前に、金次郎の故郷・小田原での先行上映会。
もー、この日をどれだけ待ちわびたことか。
多くの人の期待や希望が詰まった作品であることを証明するかの如く、
1000人強のキャパを有する会場にも関わらず、チケットは2回分とも年内に完売。
当日券を求めて来場された方の姿もチラホラお見受けしましたが、前売分で満席
だったため、残念ながらご覧になれなかった方もいらっしゃったようです。
今や1000席を有する映画館というのは国内に殆ど存在しません。
こんな大勢の人々と同じ空間で同じ時間に同じ映画を見るという事自体が
非常に貴重な体験となっている昨今、大好きな方々が携わる作品でその経験が
できたこと、本当に感謝です。
夏の公開の際は様々な地域、できるだけ多くの劇場でこの作品が掛かることを
願います。いや、それが叶うよう、今回一足先に見せていただいた私たちが
広めていけたらなと思います。
以下、全国公開を控えた作品ですので、できるだけストーリーの
ネタバレがないように感想を記したつもりであります。
稚拙な文章ですが、この映画に興味のある方はぜひご一読ください。
何が何でも前情報を入れたくない方はご遠慮くださいませm(_ _)m
映画は金次郎の一生をロードムービーっぽく描くのかな?と
想像しておりましたが、桜町領の再興に焦点を絞って
彼の生き方、仕法の礎となった精神を丁寧にあぶり出す
作品になっておりました。
オールロケで撮影されたとの事で、小田原から望む富士山をはじめ
美しい山々や田畑、茅葺屋根の家屋など、日本の原風景とも言える
景色が広がり、素朴な中にも力強さや神々しさの宿る映像美。
あの映像を生みだすのにCGも駆使されていると思いますが
大変ナチュラルで、とても丁寧に作られていることが想像できます。
それらの風景を楽しむだけでも一見の価値アリです。
俳優さんたちの豊かな感情表現も必見。
大人も子供も画面に登場する全ての人物が愛おしくて大好きになります。
このチラシのカットが物語るように誰もが怒って泣いて最後には笑って。
そこに生きている人々のありのままを感じる姿を魅せてくださいました。
柳沢慎吾さんの演じる屈折した男の不適な笑み、カミナリのお二人の
コミカルさも不思議とこの物語にピッタリフィットして。
演者さんたちの新たな一面が引き出されていました。
犬山ヴィーノさん演じる岸右衛門の静かなカッコよさといったら…
百姓ダンディズム(笑)
金次郎さんはある理由から己の胸の内を殆ど言葉にしません。
(実際も幼少期の事など自ら語ることはあまりしなかったそうです)
言い訳や泣き言などなく、ただひたすらに己の道を進む姿に感銘を受ける者、
またその一方では真意が汲み取って貰えず大きな軋轢も生じます。
愚直なまでに一直線な金次郎さんの姿は、合田さんの持ち味である清廉潔白さが
存分に活かされ、その一挙手一投足に時にハラハラ時にウルウルさせられっぱなし。
大きな瞳が物語る強い意思、時に凛々しく時に儚い横顔の美しさ。
全身から二宮金次郎その人の生き様・気迫が満ち溢れていました。
そして、そんな合田金次郎さんを太陽のような暖かさで優しく大きく包んでくれる
妻のなみさん。田中美里さんのたおやかで朗らかな雰囲気と心地よい声が
全ての人の心をスーッと浄化していきます。彼女の存在なしに金次郎の
功績は有り得なかったと言わしめるのに十二分な説得力がありました。
なみさんの発する前向きな科白の数々にハッとさせられる人も多いはず。
どんなに苦しい状況に置かれてもこういう優しい言葉を発する女性になりたい。
そんなセリフがたくさんたくさん散りばめられていました。
柏田先生の真骨頂です。
欲を言えばエンディングは新たな土地の復興に向かう金次郎の姿で
あって欲しかった。次は皆さんの町に訪れるかもしれませんよ的な。
(注:花の子ルンルンではありません・古)
だってだって、それなら続編に期待が持てるじゃない!
もっと見たいよぉ~。
桜町以前の小田原での日々、富田高慶ら門弟とのやりとり…
合田金次郎さんの生き様をまだまだ見ていたい。どんな表情をするのか、
どんな言葉を発するのか、どんな困難に出会いそれを突破していくのか…
物語が終盤へ向かっていく気配がこれほどまでに寂しいというか、
まだ終わらないで、なんならこのままずっと続いて(爆)と、
こんなにも後ろ髪を引かれてしまった映画は初めてかもしれません。
それほど、二宮金次郎という人物に魅せられ惹きつけられる作品に
なっています。もっと見たい、もっと知りたいそんな思いに駆り立てられたのは
私だけではないはず。
・・・監督の思惑、大成功!?
歴史伝記映画という堅い側面よりも、現状を打破したいそう強く願い
目の前の大きな壁を打ち砕かんと立ち向かう男の熱血ストーリーとして
感情移入することのできる面白みの強い作品です。
二宮金次郎という日本が誇る偉人の功績と共に、たくさんの人に愛され
そして100年生き続ける作品となりますように…