カンゲキ記

夢のひとときに感謝

劇団NLT『やっとことっちゃうんとこな』


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      (カテコ撮影OKでしたので、記念に掲載♪)

 

NLTで歌舞伎!?
それは、50周年を締めくくるに相応しい、楽しさと愛に溢れた新作。
劇団、いや、演劇界の明るい未来も想像できました。

 この舞台の上演を知った時からそれはそれは楽しみに待っていました。
キャストさんたちも長い期間歌舞伎の所作、立ち回り等をお稽古されていたようです。

 梨園のダメ御曹司とそれを取り巻く人々の悲喜交々。
御曹司が初めて開く自主会前後のドタバタが面白おかしく、
そしてジーンと胸に迫るストーリーで描かれています。

その劇中劇で本当に歌舞伎をやっちゃうって算段。

ホントにしっかりカブいてました。NLTの皆さん。

劇中劇は仮名手本忠臣蔵の五段目。斧定九郎がそこで死ななかった
(代わりに勘平が死んじゃった)ら・・・という新作(笑)
五段目以降も定九郎があの姿でウロウロしてる・・・その様があまりにもシュールで
ジワジワきてしまうのですが、意外と違和感がない。
それ以上におかしな事象が舞台上で繰り広げられるので、そっちのほうが気になる(笑)

嵐新九郎を演じる小泉さんの大奮闘に思わず「麻喜屋!!」と、大向こうを
かけそうになってしまいました(心の中では見得を切るたびに掛けてました!)
当代の若手花形も真っ青なほど、絶品の色悪に女方。元々綺麗なお顔の俳優さんですが
白塗りの美しいこと。一力茶屋でお袖(本来はお軽)が延鏡越しに
由良之助宛ての手紙を
覗き見るその横顔の妖艶さにクラクラ。
それから、弟子の源之丞に口上を教える時の調子。
あらすじの朗々とした
語りから地に戻るときの強弱が
「そうそう!歌舞伎役者さんの口上ってそんな感じだよね!」ってニンマリ。
大立ち回りから梯子を昇っての見得も凛々しくて、嵐新九郎の自主会は
正しく大成功といった塩梅でした!

 新九郎を弟のように思いやる市松屋の若旦那に松岡さん。
さっぱりとした口跡と無駄のない綺麗な所作は、立役・女方オールマイティな
雰囲気を漂わせています。マカロニの短気で理屈屋の若頭取も素敵でしたが
新九郎を時に厳しく特に静かに見守る兄さんの優しさも深く心に
残るものとなりました。

 折り目正しい女方役の山本行平さん、初々しくて愛らしかったぁ。
真面目で有望な研修所上がりのお弟子に根本さん。
fabulousなお嬢様の三井さん。
相変わらず我が道を行き、一人大騒動な役がピッタリの亀井さん。
(ちなみに、亀井さんの役の名字(の読み)が自分と同じで
上演中、ずーっと皆さんに名前を呼ばれドキドキでした^^;)

 NLTの若い力総結集。爽やかな熱意に包まれた場内。
こちらの熱量も自ずと高まります。

 そして、ベテランの役者さんたちが最上のスパイスを随所に
効かせて上質な喜劇に仕上げてくださいます。

 弟子の源之丞を演じていらっしゃったのが川端さん。
もうもう、川端さん。本当に凄い!
幕開き、上手奥のほうに背中を向けてちょこーんと座っているんですが、
歌舞伎が好きな人ならその姿をみて「古参の女方のお弟子さん」ってすぐわかるハズ。
台詞も動きもなくただ後ろを向いて座っているその背中、肩のライン・・・
完璧に「古参の女方のお弟子さん」の佇まいなのです。
そして口を開けば面白すぎ。気弱な中に芸暦55年、女方のプライドがチラチラ。
娘役の可憐さは笑也さんにも負けない(!?)チャーミングさがありましたよ(笑)
次はぜひ、赤姫をば……(爆)

 安奈さん演じる姉やの若干間違った方向(笑)の大奮闘にも
深い深い愛を感じ、泣き笑い。

 NLTの上質な喜劇と花形歌舞伎の奮闘。
一粒で二度いや三度も四度も美味しい舞台。

改めて歌舞伎という演劇の技術性の高さ、所作の美しさ難しさを
感じた次第でもございます。